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毎熊克哉「優しさとは何かを語り合うきっかけに‥」
2025/7/6 10:42
7月5日、新宿武蔵野館で指名手配犯・桐島聡の、弱い立場の人に寄り添う人柄・考えをドラマチックに描く衝撃作『「桐島です」』の公開記念舞台挨拶が行われ、主演の毎熊克哉と北香那、海空、甲本雅裕、高橋伴明監督が登壇した。
2024年1月26日に、「ウチダヒロシ」という偽名を使って藤沢市内の土木関係の会社で住み込みで働いていたことが判明し、3日後に亡くなった指名手配犯・桐島聡氏。桐島は何を思い、どんな事件を起こし、その後、半世紀にわたって、どんな逃亡生活を送っていたのか。

冒頭伴明監督が前日の公開初日に、「当時の学生運動の先輩たちから、観終わった後に、OKサインが出た」と報告。
伴明監督は、「私はいい加減な学生運動家だったので、イデオロギーはなしで、思いつきというか、妙な正義感で『これはいかんだろう』と思ったことは口にして、行動に移したタイプ。(桐島も)そういう確固たるものはないような人のような気がしている。50年近く捕まらなかった最大の理由が、イデオロギーのなさってことじゃないかなと思っている」と桐島と自身の共通点を分析。
劇中、毎熊と北は、ギターの弾き語りを披露。毎熊は、「ちゃんとコードを弾いて歌うのは初めてだった」とのこと。北は「趣味でやっていましたが、(いつもは楽譜を見ながら弾くので、)楽譜を覚えるのが大変だったのと、毎熊さんが(練習時に)持っていたギターが本格的すぎて、『あれ、いつもやっているのかな?』と思った」と言うと、毎熊は、「あれは、借りパクしたやつ」と真相を告白した。
毎熊は北演じるキーナの『時代おくれ』の弾き語りを聞いてグッとくるシーンがあるが、「歌詞ももちろん入ってはくるんですけれど、北さんの歌っている姿と、目がキレイだった。それをみて、自分との対比というか、それにグッと来た」と話した。
北は、毎熊について、「演じる桐島がどういう人かをすごく知りたくなる魅力を持っている。『この人をどういう人か知りたい』というのがキーナを演じるにあたって、すごく必要だったので、常に助けられていた」と感謝した。
二人が歌う『時代おくれ』のタイトルについて伴明監督は、「学生運動の真っ最中に警察に捕まりまして、その時に彼女が田舎から出てきたんです。警察署の中で『時代遅れだ』と真っ直ぐに言われたんで愕然としたんですけど、『だったらそれでいいよ、俺は時代遅れだから。帰れ』と追い返した記憶がある」と激白。
その『時代おくれ』という言葉を桐島に言ったヨーコ役の海空は、実は伴明監督と本作にも出演している女優の高橋惠子のお孫さんで、本作が俳優デビュー。「俳優を目指したいという噂を聞きつけた祖父から家で、『こういう役で出てみない?』って言っていただいたんですけど、私の心情としては、事務所にも所属していない状態で、ステップをスキップした状態で出演するのは申し訳ない気持ちもあるし、『俳優として積み重ねてから作品に出たいです』と丁寧にお断りしたんですけれど、その後も2〜3回猛烈なオファーを頂いた。私がやらなきゃと思ったのは、3回目に、『俺はいつまで生きているかわからない』と脅されまして、『先延ばししたらダメなんだ』と私も決心をした」と話し、会場を笑わせた。
毎熊は、その『時代おくれ』と振られるシーンがクランクインだったそう。「桐島が本格的に爆弾闘争をやる前のシーンからやれるというのは、よかった。普通の学生が彼女と映画を見に行ってというシーンが後々大事な何気ないシーンだったので、そのシーンからできたのは、よかったかなと思う。けど、桐島は『帰れ』とは言ってないです!」とジョークを交えて話した。
甲本は、桐島の隣の部屋に住む隣人役。桐島の静かな逃亡生活の中のスパイスとして、どのような思いで演じたか聞かれると、「(スパイスの)甘いのか辛いのかどっちなの?みたいな人間像をイメージしながら、役作りをした気がします」と回想。
桐島のジョークを聞くシーンで、隣の男は、シナリオでは『…笑えないな』と返しているが、完成したら映画では、違う返し方をしている。「そのジョークに、『…笑えないな』と返すはずなんですけど、そのジョークを聞いた時に、『とてつもなくつまらないジョークというのは、世界を沈黙させるんだな』と。声も出ず、ただ頷いたんです。監督はどう言うかなと思ったら、監督は毎熊くんに、『この男はもう喋らないから、喋らない彼を見て、桐島がリアクションしてくれ』みたいな演出をしていて、ホッとしました」と裏話を披露した。
最後に毎熊より、「この映画の中に優しさだったり、怒りだったり色んな感情を感じて、この映画を観たことによって、優しさとは何なんだとか、なんでこの人はこんなに怒ってるんだということを、今この日本でどういうことかを映画を通して語り合うことがこの映画のある価値ではないかと思っていますので、できるだけ多くの方に観ていただきたいです」と熱いメッセージが送られた。

【イントロダクション】
2024年1月26日、衝撃的なニュースが日本を駆け巡った。1970年代の連続企業爆破事件で指名手配中の「東アジア反日武装戦線」メンバー、桐島聡容疑者(70)とみられる人物が、末期の胃がんのため、神奈川県内の病院に入院していることが判明した。
男は数十年前から「ウチダヒロシ」と名乗り、神奈川県藤沢市内の土木関係の会社で住み込みで働いていた。入院時にもこの名前を使用していたが、健康保険証などの身分証は提示しておらず、男は「最期は本名で迎えたい」と語った。報道の3日後の29日に亡くなり、約半世紀にわたる逃亡生活に幕を下ろした。
桐島聡は、1975年4月19日に東京・銀座の「韓国産業経済研究所」ビルに爆弾を仕掛け、爆発させた事件に関与したとして、爆発物取締罰則違反の疑いで全国に指名手配されていた。最終的に被疑者死亡のため、不起訴処分となっている。
このナゾに満ちた桐島聡の軌跡を『夜明けまでバス停で』(22)で第96回キネマ旬報ベスト・テン日本映画監督賞、脚本賞を始め数々の映画賞を受賞した脚本家・梶原阿貴と高橋伴明監督のコンビがシナリオ化。医師の長尾和宏が、『痛くない死に方』『夜明けまでバス停で』に続き、高橋作品の製作総指揮を務める。
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