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杉咲花「みなさまの心の琴線に触れてくれたら嬉しい」
2025/10/26 10:05
映画『ミーツ・ザ・ワールド』の公開を記念して10月25日(土)、映画の舞台でもある東京・新宿にある新宿バルト9にて舞台挨拶が開催。杉咲花、南琴奈、板垣李光人、蒼井優、松居大悟監督が登壇した。
本作で、“腐女子”の主人公・由嘉里を演じた杉咲。既に映画を見た人々からは、その“解像度”の高さに称賛の声が上がっているが、役作りについて杉咲は「まず原作の人物造形の素晴らしさがあると思うんですけど、クランクインする前に演出部のスタッフさんたちがいろんな方々にリサーチをしてくださったり、自分でもSNSを見たり、実際にお会いして、お話をお聞きしたりして、監督と一緒に試行錯誤して由嘉里を探していった感じでした」とふり返る。

南は、希死念慮を抱える美しいキャバ嬢のライを演じたが「ライは掴みどころがないというふうに捉えていました。がっしりと掴めてしまうのも違うのかな…? と思っていて、監督には『オーディションの時のような、そのままでいてほしい』という言葉をいただいていたので、なるべく自然体でいられるように考えていました」と明かす。キャバ嬢というライの仕事面に関しては「事前にお店にお伺いしてお話を、仕事内容から私生活までざっくばらんに聞かせていただきました」と明かす。
ホストのアサヒを演じた板垣も、実際にホストの方に事前に話を聞いてリサーチしたそうで「本当に全部参考になりました。日々のこと、どういうルーティンで生活してらっしゃるのかもそうですし、実際にお店に伺ったときに、みなさんから名刺をいただいたんですが、それがすごくキラキラしていてキレイな名刺が印象的で、劇中でもアサヒの名刺を作っていただきました。それが現場でも人気で、スタッフのみなさんに渡し歩いたり(笑)、コップをおしぼりで定期的にふいたり、おしぼりを三角形にたたんだり、実際にうかがわないとわからない部分があって、肌で感じられたのは演じる上で大きかったです」と述懐。実際、ホストクラブの名刺用の写真を撮影するスタジオで写真の撮影を行なったそうで、松居監督は「カメラマンの方も『これ、売れますよ!』ってめちゃめちゃテンション上がってました(笑)」と明かしてくれた。
蒼井は毒舌な作家のユキを演じたが、松居監督との長編作品での仕事は2016年公開の『アズミ・ハルコは行方不明』以来。同作の撮影が行われたのは10年前(2015年)となるが蒼井は「10年ぶりにご一緒できて嬉しかったです」とニッコリ。「あの当時、29歳か30歳くらいで、プロデューサーも同い年で、私にとっては“最後の青春”で、商業映画ではあったんですが、マインドは学生映画をつくっているような『熱量と愛でどうにかするぞ!』みたいなところがありました。10年ぶりの今回もそういうところはあるんですけど、少しだけお互いに大人になって…『あぁ、10年経ってもこうやって映画に対する愛情を失うことなく再会できたことが嬉しいな』と思いました」としみじみ。
蒼井の愛情あふれる言葉に松居監督も「嬉しいことを言ってくれますね…。プロデューサーとかスタッフ、役者とか肩書きに関係なく、全員野球みたいにつくった映画で思い出に残っています」とふり返り、今回の蒼井の出演に関して「『出ていただけるかな?』と思ったんですけど、祈りながら返事を待っていました」と語る。
蒼井は「どこかで、私の中でアズミハルコという役をやらせていただいて、ハルコが出会う人がこうだったら、きっとユキになっているだろうな…と何となく、自分の中で勝手なストーリーがあったので、やりたいなと思いました」と出演を決めた理由を明かした。
本作は食べるシーンが多く登場し、非常に魅力的にスクリーンに描き出されるが、松居監督は「生きることと食べることってつながってくると思った」と食事のシーンへの思いを語る。

杉咲は印象深い食事シーンとして「ラーメン屋さんのシーンが何度か出てくるんですが、そのラーメンが本当においしくて、みんなカットが掛かった後もずっと食べてました(笑)」と明かし、蒼井も「(夜中に撮影を行なう)ナイトシフトが多かったんですが、深夜のラーメン最高でした!」と満面の笑みを浮かべ「本当に花ちゃんが素晴らしくて、こんなに泣ける食べ方あるか!っていう感じなので、ぜひ楽しみにしていただけたら」とこれから映画を見る観客の期待を煽る。南は役柄上、自分が食べるよりも由嘉里が食べるのを見守ることが多かったが「ライは食べ方も箸の持ち方もグチャグチャで、食べる時も麺を1~2本しかとらないなど、細かいところもお話をして決めていきました」と食事のシーンでも役柄を意識して細部を大切に作っていったと明かす。
板垣は、由嘉里と一緒に焼肉を食べるシーンについて「たくさん食べられるように脂の分量の少ないものを選んだり、緻密に計算して食べてました。アスリートみたいだなと撮りながら思いました(笑)」とふり返った。
そして、この日は映画にちなんで、キャスト陣が自身にとって新しい世界との出会いとなった経験を発表! 杉咲は「山」と書かれたフリップを掲げ「ずっと登山がしたかったんですが、最近、やっと行けて、木曽駒ケ岳に登りました。すっごくキツかったんですけど、山頂で食べたサラミがメチャクチャおいしくて…『こんなにおいしかったんだ!』と。初めて経験して幸せでした」と苦しい登山の末に山頂で体験した感動を明かした。
南は「コーヒー」との出会いで新たな世界の扉を開けたそうで「本当に最近、2週間くらい前に飲めるようになりました。ずっと苦手で『まだ飲まなくていいや』という気持ちだったんですが、高校を卒業して一日お仕事ができるようになって、眠くなった時にスタッフさんから『コーヒーいかがですか?』と言ってもらえることが増えて、飲んでみたらおいしかったです」と笑顔を見せた。

板垣の“ミーツ・ザ・ワールド”は「海外での仕事」。最近、韓国での仕事があったそうで「ヘアメイクさんとかも韓国のクルーの方だったんですけど、韓国のメイクさんはホクロとかを一度、全部消すんです。僕は目の下にホクロがあるんですけど『これは活かしますか?』と聞かれて『はい、活かします』と言ったら、一度消されて、上から描かれるんです。日本で仕事をしている感覚や価値観と全く違うので、日本で仕事をする上でも、いままで自分がやってきたことと違う経験をすると、良い刺激になるなと思いました」と海外での経験に触発される部分が大いにあったよう。
蒼井は「30歳」と書かれたフリップを見せ「30歳になった瞬間に、自分の中でしっくりくる年齢になったぞという感じがありました」と告白。先ほどの話にもあるように、当時は松居組で仕事をしており「(本作の由嘉里、ライ、アサヒの)3人が過ごしたような時間を松居組のみんなと過ごしていて、30歳になったタイミングで、同じ映画界で異業種の仲間がいるということの心強さもあって、『私の足で立った』という感じがして、新しい扉が開いた気がしました」と改めて10年前の松居組での経験が自身のキャリア、人生においても特別なことだったと語る。この蒼井の言葉に松居監督は「家に帰って泣いちゃうかもしれないです…」と感慨深げだった。
舞台挨拶の最後に松居監督は「『ミーツ・ザ・ワールド』は他人と自分を比べて落ち込んでしまったり、人や周りに気を遣い過ぎて疲れてしまったり、そういう時代になってしまっているなと思った時に、この映画を見て少しでも息がしやすくなればという祈りを込めてつくりました。映画の中の登場人物や新宿が活き活きとしていると思いますので、ぜひ楽しんでください」と呼びかける。
蒼井は「登場人物たちがガチャガチャしていたり、異物だったりするかもしれませんけど、その中で由嘉里が、いろんなものにぶつかりながらも真ん中に持っているものは、この世界を生きていくのに必要なものなんじゃないかと私は感じました。みなさんも私も、由嘉里が持っている温かさ、ピュアな部分に自信をもって、これからもいろんな人と出会っていくことを一緒に楽しんでいけたらと思います」と語る。
板垣は「この物語の主人公は由嘉里ですが、見てくださるみなさんの中にも由嘉里はたくさんいて、自分のアイデンティティがわからなかったり、何かをあきらめてしまっている心の片隅に、そっと寄り添ってくれるような作品になっているのではないかと思います。 寒くなってきたので、ちょっと心がこの映画で温かくなっていただけたらと思います」と優しく語り掛ける。
南は「生きていたら、いろんな人との出会いがあって、価値観が合わなかったり、生きてきた環境が違ったり、本当にいろんな人との出会いがあると思います。わかり合えなさに直面した時、わかり合えないからと境界線を引くのではなく、絶妙な距離感で人と人が思いやっていく温かさは愛おしいものなんだと、この映画で感じました。見ていただいた方が『明日も頑張ろう』と思えたり、『好きなものを好き』って言えたり、そんな優しい力が与えられていたら嬉しいです」と映画に込められたメッセージを口にする。
そして、杉咲は「この撮影期間をすごく苦しい日々だったなと思い返していました。私は、あまり演じる時に個人的な感情を持ち込む方じゃないんですが、それでも由嘉里を演じていて、他者と自分を比較してしまうところとか、自分を好きになれない部分とか、なんだか他人事じゃない、他人に見せてはいけないものを見せているような感覚になる撮影の日々でした。撮影中はその苦しみの中にいて気づかなかったんですけど、完成した映画を客観的に見た時、そういう他人に見られて恥ずかしいなって思うところを案外、人は面白がってくれるかもしれないと気づいて救われました。自分を好きになれなくてもいいから、そういうところも含めて自分だと思わせてもらえる、エールをもらえる作品になりました。見てくださるみなさまの心の琴線に触れてくれたら嬉しいです」と語り、会場は温かい拍手に包まれた。

『ミーツ・ザ・ワールド』は全国公開中。
<Story>
擬人化焼肉漫画「ミート・イズ・マイン」に全力で愛を注ぎながらも、自分のことは好きになれない由嘉里。27歳になって結婚・出産…と違う世界に次々と離脱する腐女子仲間をみて、このまま仕事と趣味だけで生きていくことへの不安と焦りを感じ、婚活を始める。しかし参加した合コンで惨敗。歌舞伎町で酔いつぶれていたところ、希死念慮を抱えるキャバ嬢・ライに助けられる。ライになぜか惹かれた由嘉里は、そのままルームシェアを始めることに。やがて、既婚のNo.1ホスト・アサヒ、人の死ばかりを題材にする毒舌作家・ユキ、街に寄り添うBARのマスター・オシンと出会い、歌舞伎町での生活に安らぎを覚えていく。そんな日々の中でもライのことが気がかりな由嘉里は、かつての恋人との確執が解ければ死にたい感情は消えるかもしれないと考え、アサヒやユキ、オシンに相談する。だが、価値観を押し付けるのはよくないと言われてしまう。それでもライに生きてほしいと願う由嘉里は、元恋人との再会を試みるが―。
◆映画『ミーツ・ザ・ワールド』公開記念舞台挨拶
10月25日(土)12:00~12:30※上映前登壇

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