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「未経験は受験可能?」「どんな人が合格するの?」俳優座演劇研究所の“今”を聞く!
2026/2/12 15:18
1944年(昭和19)に誕生した劇団「俳優座」。日本を代表する新劇の劇団として、多くの名優がその舞台に立ち、現在も活動を続けている。なぜ、優れた役者を生み出し続けることができるのか。それは俳優座が優れた育成システムを持っているからだ。
1949年に俳優座養成所が誕生。ここから育った名優は岩崎加根子、仲代達矢、田中邦衛、原田芳雄、市原悦子など、名前を挙げればきりがないほど。養成所は桐朋学園と共に歩んだ時代を経て、現在は俳優座演劇研究所となって今でも多くの若手俳優を育てている。俳優座演劇研究所とはいったいどんな学びの場なのか。研究所を卒業して現在は俳優座の座員である野々山貴之(左)、小泉将臣(右)、椎名慧都に話を聞いた。
■それぞれの俳優座演劇研究所
――まずは自己紹介からお願いします。
野々山 19期の野々山貴之です。僕は専門学校で演劇を2年間勉強してから入りました。専門学校って高校の延長じゃないですけど、ちょっと緩めというか、部活動みたいな感じのノリの人が多かったんです。そこで僕は新劇の養成所でもう1回学びたいと思って、文学座や劇団民藝、青年座とかの芝居を見に行きました。そんな時に俳優座の「春、忍び難きを」という舞台を見て、俳優座研究所を目指すことを決めました。
――当時の研究所の雰囲気は?
野々山 僕の時代は演劇経験者が多くて。同期はライバル意識も強く、ピリピリしていたところもあったと思います。
小泉 25期の小泉将臣です。僕は大学を中退しまして、日本映画学校(現在の日本映画大学)の俳優科に通っていました。当時、ある映画監督に言われたのが、「お前らは新劇の俳優には勝てない。あいつらは歩くのに3年かけている」って言われたんです。それがいったいどういうことなんだろうって気になりながら、卒業後はフリーで俳優活動をしていました。ただ、フリーの俳優なんて本当に厳しいんですよ。すごく悔しい思いもしました。そこで1から勉強したいと思って、俳優座研究所を受けました。
――実際に歩くのに3年も……?
小泉 いや、実際はそんな雰囲気ではなく、本当に楽しく演技の勉強ができました。当時は、イギリスのRADA(英国王立演劇アカデミー)で勉強された森一さんの授業がありました。バレエがあったり、マイムがあったり、歌ったり。体を緩めるっていう授業があって、その試験の時に「ゆるゆるしろ!」って怒られながらやったのを覚えています。僕は青春っていうのが人生の中であんまり感じなかったんですけど、今になれば実は研究所が僕の青春だったなって自信を持って言えるんです。
――なぜ、青春を感じることが?
小泉 みんな俳優になりたいという同じ夢を追って通っていました。僕の時は毎年査定があって20人入ったら次の年に上がれるのが多くて8人ぐらいだったんです。1年後には半分以上がいなくなるので、長いオーディションをされているような感じですかね。そんな中で、切磋琢磨しながら過ごしていたので、なんとなくいい意味でもピリピリしながら過ごすことができました。みんなで芝居について考えていくという貴重な時間だったと思います。
椎名 私は28期です。桐朋学園芸術短期大学の演劇を学んで、専攻科まで通って卒業しました。在学中に劇団員の清水直子さんが俳優座の宣伝にいらして、それで俳優座の舞台を観劇するようになりました。親族で新劇系の人がいて幼い頃から触れていたこともあったので、自分も新劇の方に行くのがいいのかなって漠然と思ったりもしていました。そんな関わりがあったことから、私は俳優座に入ることを目的に研究所に入りました。
――大学との違いは感じましたか?
椎名 私たちの研究所の期は、未経験の人と経験してきた人とが半分半分でした。日大の芸術学部を卒業している人もいれば、18歳で高校卒業したばかりの人もいたり。演出部にはもともと小学校の先生をやられていて、そこから演劇の世界を目指したいと入ってくる人もいました。いろんな人生経験をしてきた人と一緒に作品を作ることで、発見もいっぱいありました。これは同じような年齢が集まる学校ではなかったことでした。あとは、大学だと私の時には演劇専攻に1学年で90人近く学生がいたので、授業は多い時には40人ほど受ける感じになります。一方で研究所は20人以下のすごく少数でサボれない(笑)。学校だと「やります!」って手を挙げた人が、先生に見てもらうみたいなことが多かったんですけど、研究所はもういやが応でも発表しなきゃいけない。ソングっていう歌の授業があったのですが、それも毎週違う課題曲があって、毎週発表をしなくてはいけなかった。そんな時間は刺激的でもあり、とても濃密でもあり、とても楽しい時間でした。
■演劇研究所で学んだこと、そして同期
小泉 僕は考え方が180度、変わりました。例えば “役作り”として「こういう役ってこんな感じじゃないか」と考える前に、「自分の言葉が嘘でないか。嘘をつかないでしゃべるにはどうすればいいか。芝居をしないってことが芝居なんだ」と、そんな解釈を教えてもらえました。これはとても印象的でした。
野々山 研究所、準劇団員、劇団員と進んでいく中で、団体で活動をすることの大切さを学べたと思います。そもそも、演劇は団体でやるものなので、その根底を学べることはとても大事なことだと思うんです。俳優座以外でも、小劇場とかプロデュース公演みたいないろんな立場の方が集まってくる場に参加することもありますが、劇団で育ってきている人だと、周りが何を求めているか、何に気を向かなきゃいけないのかなどを敏感に感じ取ることができると思います。僕も劇団の研究所に通いながら自然と身につけることができたと思います。
椎名 大学まではちゃんと綺麗に話せて体が使えるのが大切と思ってしまっている部分が強かったように思います。もちろん、それはとても大切で、今の研究所でも基礎を重視しています。でも、私が研究所に入った1年目の最初の時に、「あなた自身が見えなかったら誰にも愛されない」って言われて。むしろ未経験で入ってきた人のほうが、そのままの姿をキラキラ見せることができていたりして、とても悩みました。いろんなことを教えてもらえましたが、あらためて俳優としてどうやって生きていくべきなのかと自分自身を見つめる時間にもなったと思います。
――ちなみに研究所での同期ってどんな関係ですか?
小泉 決してベタベタするわけではないんですよ。兄弟みたいな感じなのかな。つかず離れずいたら喋るし、一緒に公演に出れば心強い。
野々山 兄弟って雰囲気はすごくわかります。兄弟ってそんなに頻繁に連絡をとって、じゃあ飯を食べに行こうみたいにはならないと思います。あと友達とも違いますね。友達が活躍してたらめちゃめちゃうれしい。でも同期が活躍していると、うれしいんですけど、負けられないって気持ちにもなります。
――徐々に兄弟のような関係になっていく?
小泉 そうですね。一緒にスタートラインを切って、様々な経験を共有して兄弟になって、愛着が湧いていきます。
椎名 私は、友達とかでもライバルとかでもなく、“同期”っていうジャンルみたいな感じがあるような気がしますね。やっぱり同期だから話せること、同期の関係だから言えることもあります。でも競い合っている部分は確かにありますし、友達としての仲の良さとは少し違うのかなって思ったりします。そうすると、やっぱり“同期”っていうジャンルになるんだと思うんです。同じ夢を持っている人たちの間でしか作れない人間関係という感じかもしれないです。
■今、演劇研究所で学べること
――現在、研究所ではどんなことが学べるのですか?
小泉 先ほど僕が「歩くのに3年」とお話しましたが、特に今のカリキュラムでは、そんな濃厚な授業を受けることができるんです。2年課程なので、「歩くのに2年」ですかね(笑)。カリキュラムアドバイザーで講師の横尾圭亮さんはロシアの大学の俳優学科に主席で入学して、最新のロシアの演劇教育を体系的に学んできたことを日本に伝えています。横尾さんからはロシアで行われているステージムーブメント、シアターゲーム、演技術などを学ぶことができます。役に応じて身体の動きも変えることができるようにストイックに訓練をします。これは、今の時代にベストな俳優の育成法だと思います。
野々山 実際に1年生の修了公演と2年生の修了公演では、驚くくらいの成長をしています。その成長には感動をしてしまいました。今のカリキュラムはとても良いんだなって思いましたし、自分ももっと頑張らなければいけないと思いました。
椎名 あとは今までは俳優座に入るための俳優を育てる養成機関という意味合いが強かったのですが、それだけでなく演劇界の人材を育てようという場に変わったのが多分大きなポイント。すごく開かれた機関になっています。
――かつては査定があって、2年生に進級できないこともあったと聞きましたが。
小泉 今は素行などに問題がなければ基本的には2年間パックです(笑)。ただ、そこから準劇団員になるためには、昇格審査があります。

■演劇研究所には未経験でも入れるのか?
――研究所に入るために試験があります。やはり演劇未経験では難しいのでしょうか。
小泉 まったくなくても大丈夫です。難しい演劇的な準備は必要ないですが、試験の課題に対して真面目に取り組んだという姿勢は大事だと思います。
椎名 歌の試験もみんなが知っているようなものが課題曲で、それもいくつか用意されている中から選べるので、楽譜がすごく読めなくてはいけないということもありません。
小泉 むしろルーキーだからこそある粗削りなダイヤモンドの原石みたいなものって、本当に感じることはあるんですよ。
――豊富な演劇経験を積んできたから合格するわけではないということならば、合格するためのポイントとは何になるのでしょうか?
椎名 演技の試験では一度、見せてもらった後に、試験官の演出家から「もっと、こうやってみたら」とフィードバックがあります。それでもう一回、修正した演技を見せるということをやっています。その時、どうやって受け止めて、自分の中で課題を見つけて解消をするかが大事だと思います。そんな中で、俳優としての伸びしろやその人の性質が見られるような気がします。
野々山 経験者でも経験者でなくても、素直に挑んでもらうのが一番大事だと思います。素直にやって、その人の人間性が見えるのが、審査しやすいし、見てて面白いんです。準備することも大事ですが、準備したことだけを見せられても困ってしまいます。準備して頑張ってきたのを見せるというより、頑張ったことがその場で出ちゃう。そんなものが面白いんです。とにかく自分を無理につくろわないで、無理してこっちが欲しいだろうと予想して答えを投げようとしないこと。自分の答えをちゃんと持っていることを大事にしてほしいです。
――きっと演劇を観るお客さんも、そういう方を見ていると楽しいはずですよね。
野々山 試験の場でも、それができるかどうか。とても大事ですね。
――最後になります。俳優座研究所では、どんな方に学んでほしいと思いますか?
小泉 僕は役者になるって決めている人ですね。その決意さえあれば、経験は関係ないと思います。
野々山 俳優になりたいと考えた場合、自分たちで劇団を結成したり、自主企画をするとかいろんな方法があるとは思います。ただ、俳優になるなら必ず一度はしっかりと学んだ方がいいと思います。特に俳優として、どうやって表現をしていいのかわからない人にはおすすめです。しっかりとしたカリキュラムがあるので、俳優の表現方法を身につけることができると思います。
椎名 演劇研究所での生活は、自分の変化のきっかけになるものを自分で見つけられる場所だと思います。それだけ濃密な時間を過ごすことができます。自分から積極的に何かをやりたい、何か変わりたいって思っている方は、絶対に自分なりの何かを必ず見つけることができるんじゃないかなって思います。
(取材・海老原一哉)
■2026年度37期演技部研究生募集
2026年度演技部研究生<C日程>
<C日程試験日>
2/23(月)
【出願締切日】
2/16(月)郵送締切
2/20(金)14:00オンライン締切
詳細は俳優座ホームページまで https://haiyuza.net/laboratory/recruit-2/

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