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映画『廃用身』特別試写会、しんのすけ×SYO×吉田監督登壇!
2026/5/3 09:09
染谷将太主演、「映像化、絶対不可能!」と話題を呼んだ現役医師作家による衝撃作がついに映画化!『廃用身』が、5月15日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国公開される。
この度、5月1日(金)に監督の吉田光希と、映画感想Tiktokerしんのすけと映画ライターSYOが登壇したトークショー付き特別試写会を実施した。作品をめぐる率直な感想とともに、そのテーマの奥行きについて多角的な議論が交わされた。
主演は、幅広い役柄をこなす変幻自在な演技力で、圧倒的な存在感を放つ実力派俳優染谷将太。医療の限界を超えたいと力強く訴え、理想を追い求めるあまり、合理性と狂気の危うい狭間へと踏み込んでいく主人公、医師・漆原糾(うるしはら・ただす)を怪演。
共演には、老齢期医療に革命を起こす可能性を感じ取り、漆原に本の出版を持ちかける編集者・矢倉俊太郎を、主演映画『逆火』(25)や主演ドラマ「小さい頃は、神様がいて」(25/CX)、連続テレビ小説「おむすび」(25/NHK)など話題作への出演がつづく北村有起哉。両脚と左腕の麻痺に苦しめられ、漆原の〈画期的な治療〉で人生を取り戻した岩上武一に、映画『首』(23)や大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(25/NHK)の出演など、名バイプレイヤーとして活躍する個性派俳優の六平直政。漆原を支える妻の漆原菊子に、『由宇子の天秤』(21)で注目され、『敵』(25)『宝島』(25)『国宝』(25)など幅広く活躍する瀧内公美。その他、廣末哲万、中村映里子、中井友望、吉岡睦雄らが脇を固める。
原作は外務省医務官を経て、現在も在宅訪問医として活躍する久坂部羊の小説デビュー作「廃用身」(幻冬舎文庫)。出版当時、そのあまりに強烈な設定から、「映像化、絶対不可能!」と世間で話題を呼んだ。
監督と脚本を務めるのは吉田光希。東京造形大学在学中より諏訪敦彦に師事し、塚本晋也作品での現場経験を経て、『家族X』(10)、『三つの光』(17)でベルリン国際映画祭をはじめとした多数の国際映画祭での評価を通じ、世界で注目を集めてきた。本作は、そんな𠮷田が学生時代に原作と出会って衝撃を受けて以来、20年にわたり温め続けてきた、渾身企画の映画化となる。
皆さんの余韻を壊さないように対話を深めていきたい

冒頭、しんのすけは本作について「予告編で提示される“少し残酷だと思いましたか?”というセリフの意味が、鑑賞前と後で大きく変わる」と語り、SYOは「描かれている題材は非常にシリアスでありながら、どこか希望も感じられる作品」と評価。上映後のトークショーということで「皆さんの余韻を壊さないように対話を深めていきたい」とイベントをスタートさせた。
今回しんのすけとSYOをトークゲストに迎えたことについて、吉田監督は「自ら声をかけた」と明かす。これまでの活動の中で関係のある映画人が増えてきた一方で、「作品をきっかけにしなければ、新たな視点に触れる機会は少ない」とし、あえて新しい批評の視点を取り入れたい意図があったという。
そんな本作を観ての感想を、しんのすけは「題材からもう少し露悪的な作品を想像していた」と率直に振り返る。しかし実際には「むしろ非常に“愛”を感じる映画だった」と明かし、良い意味の驚きを覚えたという。さらに「2時間にわたって真摯な視線を貫いている点が印象的だった」と言い、主演の染谷の存在感と相まって、大きな魅力になっていたと評価した。
これに対し吉田監督は、「欠損というセンシティブな題材を扱う以上、インパクトとして消費されるような作品にはしたくなかった」と制作時のスタンスを明かす。「撮影では倫理的な問いを丁寧に扱うこと」を重視し、過度な演出で印象を誘導しないよう細心の注意を払ったという。「“染谷将太が人体改造しまくるサイコスリラー作品”という印象を持って観に来る方もいるかもしれませんが(笑)、その印象と違っても何かを持ち帰ってもらえるような作品にしたいと思っていました」と語った。
その姿勢は映像表現にも表れている。SYOが指摘した「引きの視点の心地よさ」に対し、監督は「カット割りは非常に強い表現だからこそ、強調しすぎないよう意識した」と説明。特に欠損描写については、過剰にクローズアップするのではなく、空間の中で人物を捉えることで、観客の受け取り方を限定しないよう設計したのだという。
さらにロケーションについても「俳優が自由に動ける空間」を重視して選定。実在の施設は空間的制約や視覚的な要素が多く、意図する表現が難しいため、あえて距離感を確保できる場所を選び、ズームレンズと移動撮影を組み合わせることで、引きと寄りをシームレスにつなぐ独自の撮影スタイルを構築したという。
こうした演出について、SYOは「観客の認識が徐々に変化していく“じわじわとした体験”が見事だった」と評価。「恐ろしいものとして捉えていた“Aケア”の在り方が、登場人物たちの言葉や状況を通して“ありなんじゃないか?”と考えが変化していき、次第に合理性や愛情として見えてくる過程が怖かった」と言い、その味わいは「シームレスな演出でなければ成立しなかった」と完成度の高さを称賛した。
演出の意図は、俳優のアプローチにも強く影響している。中でも主人公・漆原役の染谷の演技について、吉田監督は「役を演じるというより、“説得しにいく”意識だった」と振り返る。撮影前に2人で食事に行く機会があったそうで「漆原という人物はサイコパスなのか?」という議論も交わされたという。
その中で共有されたのは、「究極の善意が突き進んだ結果の行動である」という解釈。患者のためを思い抜いた結果としての選択でありながら、その価値観は極めて危ういバランスの上に成り立っている。監督は「紙一重の倫理観をどう体現するか」を重要視し、染谷もまた“相手を納得させる存在”として役に向き合っていたと語った。
しんのすけも「まさに役そのものだった」とその説得力を絶賛。また、キャストの中でも特に話題に上がったのが六平直政の存在だ。これまで豪快な役柄の印象が強い俳優だが、本作では身体の自由を失った役どころを繊細に演じており、しんのすけは「これまでに見たことのない姿だった」と驚きをあらわに。かつての活力を感じさせる人物像と現在の状態とのコントラストが、役にさらなる奥行きを与えていたと語った。
吉田監督も「非常に難しい役だったが、台本を気に入って引き受けてくださった」と振り返り、身体的にも負担の大きい演技をやりきったことに感謝を示す。現場ではキャスト同士が“Aケア”というテーマについて議論を交わす場面も多く、「自分ならどうするか」という問いが自然と共有されていたという。
こうした議論は、作品のテーマそのものにも直結している。SYOは、本作が観客に「当事者ではない立場からの残酷さ」を突きつける構造になっていると指摘。劇中の出来事を通して“Aケア”という行為の在り方や、その合理性、さらにはそこに潜む倫理的な揺らぎについて、観る者自身が問い直される体験になっていると語った。
20年以上前の作品だが、ようやく今、この時代と噛み合った

さらに、本作が今の時代に公開される意義についても議論が及ぶ。SYOは「2026年に観られる必然性がある作品」とし、高齢化社会や介護問題といった現実と地続きのテーマが、強いリアリティをもって迫ってくる点を評価。吉田監督も「原作は20年以上前の作品だが、ようやく今、この時代と噛み合った」と語り、長年温めてきた企画が結実した背景を明かした。
トーク終盤では、実生活との接続についての話題も挙がった。しんのすけは自身の家族の体験を引き合いに出し「この映画をきっかけに、誰もが自分や家族の未来について考えざるを得ない」とコメント。吉田監督も「苦しさを知らないまま判断している部分があるのではないか」と語り、想像力の重要性を強調した。
最後に吉田監督は、「問題提起だけを目的に映画を作っているわけではない」と語る。「映画館に来る人は問い詰められに来るわけではない」とした上で、エンターテインメントとしての魅力と倫理的な問いのバランスを意識したと説明。「どこかに引っかかりを持ち帰り、誰かと語りたくなる作品になっていたらうれしいです」とメッセージを送った。
なお、2度目の鑑賞については「劇場でしか気づけない音や演出にも注目してほしい」とコメント。座席によって聞こえ方が変わる音響設計や、細部に散りばめられた演出意図についても言及し、繰り返し鑑賞することで新たな発見がある作品であることを示唆していた。

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