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輝くステージの裏側で走り続ける「舞台監督助手」 そのリアルな現場とは?

エンタメ

16時間前

左から、武藤礼乃さん、是枝真子さん

 舞台の幕が上がるその瞬間まで、そして上演中も、舞台裏では多くのスタッフが作品を支えている。その中でも舞台監督助手は、小道具の製作から場面転換、早着替えの補助、舞台上で使用する物の管理まで幅広い役割を担う存在だ。しかし、その仕事内容は意外と知られていない。今回は俳優座で活躍する舞台監督助手の武藤礼乃さん(写真=左)と是枝真子さん(写真=右)に、この仕事を目指したきっかけや日々の苦労、そして舞台を支えるやりがいについて話を聞いた。

――そもそも舞台監督とはどんなお仕事なんですか?

武藤礼乃(以下、武藤) 舞台を作っていくうえで裏方には照明さん、音響さん、あと大道具さんなどいます。これら以外のお芝居を上演するために必要な裏方のお仕事を全てやるのが舞台監督です。もう少し具体的に説明しますと、稽古期間中は小道具作り、本番中には場面転換や早着替え、仕掛けの操作など様々なことをやっています。俳優座には舞台監督が3人いますが、私たちは助手として仕事をさせていただいて、経験を積ませてもらっています。

――舞台監督助手という仕事を目指されたきっかけは?

是枝真子(以下、是枝) 中学生の時に演劇に興味を持ちました。それで高校に入ったら演劇部に入ることになります。今から振り返ってみれば、高校の演劇部は結構、体育会系で厳しかったと思います。それで大学は演劇を勉強できる大学に進んで役者を目指したいなとも思っていたのですが、最終的には自信が持てなくて、演劇とは関係のない大学に進みました。ただ、大学を卒業する際に、やっぱり演劇に関する仕事をしたいと考えたんです。そこで、見つけたのが俳優座の舞台監督助手募集でした。

武藤 私は高校の時に吹奏楽部で活動をしていました。その際に演奏会などで大きなホールを使わせていただく機会があって、そこで働いている方を見て、こんな仕事もあるんだと興味を持ったことがきっかけです。高校卒業後は専門学校の演劇スタッフ科に進みました。お芝居を作る仕事の楽しさにも気づいて、先生に「劇団に入るっていう手もあるんじゃない」とすすめられて、俳優座に入りました。

――小道具などを作るということは、手先が器用なことも必要ですか?

武藤 いやあ、私はそう思ったことはないんです。むしろ、他のところでカバーしようと必死で仕事をしてきました。小さい頃、家に工具箱があって、お父さんの手伝いみたいなことはしたこともありました。ただ、本格的に学んだのは専門学校の時が最初です。小道具を作るために細かい作業を続けているので、少しずつはできるようになってはきていますが、決して器用だとは思っていないですね。

是枝 武藤さんはこうおっしゃいますが、すごく器用なんですよ。いつもいろんなことを教えていただいています。私は一応、高校の演劇部では多少、小道具を作る機会もありました。ただ、専門的なことは劇団に入ってから勉強していて、先輩たちに迷惑ばかりかけています。正直、「もうやめた方がいいんじゃないか……」って落ち込むこともあります。そもそも舞台監督を目指すことを両親に相談した時も「器用じゃないのに大丈夫なの?」って心配をされました。でもやっぱり演劇が好きなんです。向いている仕事じゃなくて、やってみたい仕事を選びたいと思って頑張っています。

――これまで作った小道具で、もっとも難しかったものはどんなものでしたか?

武藤 お芝居の中でしか出てこない舞のお面を作ったことがあります。これは入団した年のことで、右も左もわからない頃でした。完全オリジナルだったんですが、とにかく先輩に相談をしながら、ミシンとアイロンで格闘しながら作りました。

――それはラフみたいなものがあって作るんですか?

武藤 いやいやいや、なかったです。台本のト書きにオリジナルの舞が出てくると書いてあって、少し装飾についても書かれているのですが、情報はそれだけしかなくて。あとはとにかく想像を膨らませて作りました。一応、演出の方からも指摘はなかったので大丈夫だったとは思うのですが、いまだにあれで正解だったのかはわからないのです(笑)。

是枝 私は冷蔵庫です。アドバイスをもらいながら、とにかく木材で扉のある棚を作って、まずは自分で「これは冷蔵庫なんだ」と思い込むことからスタートしました。まあ、本音を言ってしまえば、そもそも木材の棚から冷蔵庫を作るって、意味がまったくわからないってところもあったのですが……。

――そこからスタートするんですね。

是枝 はい。そしてとにかく白くします。そして光沢をつけました。ただ作っている過程ではやっぱり普通の“棚”なんで……不安はあったのですが、見てくださった方から「あ、冷蔵庫だ!」って言ってもらえたんで、これはちゃんと冷蔵庫に見えるんだと、少し自信になりました。

――上演中もとても忙しいと聞きました。

武藤 裏ではとにかく何かしらをして動いていますので、体力も必要です。舞台装置を動かしたり、早着替えの手伝いをしたり、舞台上で食べるものや飲むもの必要であれば準備しなくてはいけません。本番での仕事ですので、緊張感があります。タイミングが遅れてしまうと、いろいろなことがずれていってしまいます。また役者の方に道具の渡し方を間違えてしまうと、ケガをさせてしまう危険性もあるので、集中力も持続させなくてはいけません。

是枝 舞台監督助手という仕事は、大変じゃないことがないくらいだと感じています。とにかく先を見て、仕事をする必要があります。日常の生活でもそうなんですが、私は結構、思いつきで動いてしまうことがあって。気が利く先輩方の行動を見ていると、すごいなっていつも思っています。私は舞台監督という仕事は、「優しさを売る仕事」と聞いたことがあります。先を見て、少しでも稽古がスムーズに進められるようにとか、役者の方々が安心して演じることができるようにとか、そんな意識を持って動けるようになりたいです。

――仕事として厳しさもあると思いますが、そんな中でも続けようと思えるやりがいはどんなところで感じますか?

武藤 仕事をしている中で、「今回の公演ではこれができた」ということを積み上げていくことがうれしいです。もちろん、カーテンコールが終わって、拍手の音を聞いている時は幸せです。

是枝 私は感謝をしていただいた時かもしれません。自分の仕事が正しかったのかな、ちゃんと動くことができたのかなって悩む時があるのですが、感謝してもらえたならば、不正解ではなかったのかなって思えたり、やりがいを感じたりすることができます。

――最後にこれからのことを教えてください。

是枝 今日もここがダメだったな、あれがダメだったなと、後悔して振り返ることがまだまだ多いです。とにかく「今回はいい仕事ができたな」って思える機会を増やせるように頑張っていきたいと思っています。

武藤 私は来年6月の公演で助手ではなく、舞台監督として仕事をさせてもらえることになりました。責任は重くなります。とにかく稽古から本番が終わるまで、大道具さん、音響さん、照明さんとコミュニケーションを取って、全てがうまく進むための潤滑油みたいな役割になれるように頑張りたいと思います。まだ不安も大きいのですが、これからは「舞台監督はぜひ武藤にお願いをしたい」と、そんな信頼を築き上げられるように頑張っていきたいです。

■劇団俳優座 2026年6月公演『ファーム・ホール』

俳優座スタジオ
日程 2026年6月15日(月)~30日(火)  
一般 / 前売り:6800円・当日:7000円
会場 俳優座スタジオ

※今回取材をした武藤礼乃さんと是枝真子さんも舞台監督助手として公演を支えます。

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